年金にかかる税金と確定申告

年金は雑所得として課税される

国の老齢基礎年金・老齢厚生年金と基金年金の老齢給付金(第1標準年金、第1標準年金:在職等補償年金、第2標準年金)は、雑所得とみなされ所得税と住民税の課税対象になります。これらの年金は、原則として支払いのつど所得税及び復興特別所得税*1の源泉徴収が行われます。国の年金については、年金額が所定の額未満の場合は源泉徴収されませんが、基金年金の老齢給付金は、年金額にかかわらず一律に源泉徴収が行われます。源泉徴収は、その年に納めるべき税額を概算で前払いするしくみですから、確定申告をして1年間の収入合計に基づき算定された本来の税額と源泉徴収税額との差額を精算することが必要です。基金年金の老齢給付金は、国の年金と同様に公的年金等控除の対象となります。なお、源泉徴収・確定申告に関する詳細については、国税庁の タックスアンサーのホームページ別ウィンドウで開きますをご覧いただくか、お近くの税務署へお問い合わせください。

*1東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源確保のため、復興特別所得税が創設されました。平成25年から平成49年までの各年分の所得が課税対象となります。復興特別所得税は所得税額の2.1%相当額とされ、所得税とあわせて源泉徴収されます。

国の年金の源泉徴収

国の老齢基礎年金と老齢厚生年金については、受給者から提出された「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に基づいて本人や家族の状況により控除される人的控除などが加味されて、源泉徴収税額が計算されます。ただし、その年の年金額が、65歳未満の人は108万円未満、65歳以上の人は158万円未満の場合は、源泉徴収されません。国の年金の源泉徴収税額は次の計算式により、計算されます。

「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出のある場合の源泉徴収税額の計算式

公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出のある場合の源泉徴収税額は、年金支給額から、基礎的控除額と人的控除額を足して、支給月額を掛けた額を引いた額に、5.105%を掛けて計算します。

[計算式]「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出のある場合の源泉徴収税額 [計算式]「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出のある場合の源泉徴収税額

*2 年金の支給元から1回に支給される年金額をいいます(国の年金は年6回、2ヵ月分が偶数月に支給されます)。

*3その年金支給額にかかる月数をいいます。

基金年金の老齢給付金の源泉徴収

基金年金の老齢給付金については、次のように源泉徴収税額が計算されます。

源泉徴収税額の計算式

基金年金の老齢給付金の場合の源泉徴収税額は、年金支給額から、年金支給額の25%を引いて、10.21%を掛けて計算します。

[計算式]源泉徴収税額 [計算式]源泉徴収税額

*4年金の支給元から1回に支給される年金額をいいます。)ただし、基金年金の老齢給付金の場合は、加入者本人が拠出した掛金がある場合は、掛金に相当する額が控除されます。

確定申告で税額の精算を

雑所得には給与所得のような年末調整制度がないため、確定申告では1年間の年金額や給与その他の所得を合計し、源泉徴収時に受けられなかった医療費控除などの所得控除も差し引いて計算し直し、源泉徴収された税額と実際に納付すべき税額(申告税額)との精算を行います。年金収入と給与収入がある場合の確定申告の所得税額(復興特別所得税を含む)の計算のながれは下図のようになります。

年金収入の合計が400万円以下で、その他の所得の合計が20万円以下の場合は確定申告は不要です。ただし、この場合でも還付を受けるための還付申告をすることができます。

STEP1 所得合計額の算出

所得合計額=
(年金収入-公的年金等控除)+(給与収入-給与所得控除)

公的年金等控除額の計算方法【給与収入-給与所得控除が1,000万円以下の場合】
年齢 その年中の公的年金等の総収入金額(A) 公的年金等控除額
65歳未満 130万円未満 60万円
130万円以上410万円未満 A×25%+27.5万円
410万円以上770万円未満 A×15%+68.5万円
770万円以上1,000万円未満 A×5%+145.5万円
1,000万円以上 195.5万円
65歳以上 330万円未満 110万円
330万円以上410万円未満 A×25%+27.5万円
410万円以上770万円未満 A×15%+68.5万円
770万円以上1,000万円未満 A×5%+145.5万円
1,000万円以上 195.5万円

65歳未満で年金収入が60万円未満の場合、または65歳以上で年収が110万円以下の場合は、年金所得は0円とみなされ、課税されません。

公的年金等控除額の計算方法【給与収入-給与所得控除が1,000万円超2,000万円以下の場合】
年齢 その年中の公的年金等の総収入金額(A) 公的年金等控除額
65歳未満 130万円未満 50万円
130万円以上410万円未満 A×25%+17.5万円
410万円以上770万円未満 A×15%+58.5万円
770万円以上1,000万円未満 A×5%+135.5万円
1,000万円以上 185.5万円
65歳以上 330万円未満 100万円
330万円以上410万円未満 A×25%+17.5万円
410万円以上770万円未満 A×15%+58.5万円
770万円以上1,000万円未満 A×5%+135.5万円
1,000万円以上 185.5万円

65歳未満で年金収入が50万円未満の場合、または65歳以上で年収が100万円以下の場合は、年金所得は0円とみなされ、課税されません。

公的年金等控除額の計算方法【給与収入-給与所得控除が2,000万円超の場合】
年齢 その年中の公的年金等の総収入金額(A) 公的年金等控除額
65歳未満 130万円未満 40万円
130万円以上410万円未満 A×25%+7.5万円
410万円以上770万円未満 A×15%+48.5万円
770万円以上1,000万円未満 A×5%+125.5万円
1,000万円以上 175.5万円
65歳以上 330万円未満 90万円
330万円以上410万円未満 A×25%+7.5万円
410万円以上770万円未満 A×15%+48.5万円
770万円以上1,000万円未満 A×5%+125.5万円
1,000万円以上 175.5万円

65歳未満で年金収入が40万円未満の場合、または65歳以上で年収が90万円以下の場合は、年金所得は0円とみなされ、課税されません。

給与所得控除額の計算方法(令和2年以降)
収入金額 給与所得控除額
162.5万円以下 55万円
162.5万円超180万円以下 収入金額×40%-10万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

収入金額660万円未満の場合は上記の計算式よらず、所得税法の別表により給与所得の金額求めます。

STEP2 課税所得額の算出

課税所得額=
所得合計額-所得控除*1

*1所得控除とは、税額計算の際に各納税者の個人的事情を加味するために設けられているもので、所得から差し引くことができ、課税されないものをいいます。

主な所得控除
控除の種類 控除額
医療費控除 1年間に支払った医療費-10万円
配偶者控除 最高38万円(一般)
(70歳以上の配偶者48万円)
社会保険料控除 1年間に支払った社会保険料の額
配偶者特別控除 最高38万円
生命保険料控除 最高10万円(平成24年1月以降の契約分から最高12万円)
扶養控除 38万円(一般)等
地震保険料控除 最高5万円
基礎控除 最高48万円
障害者控除 27万円(一般)等
小規模企業共済等掛金等控除 1年間に支払った加入者掛金の額

STEP3 申告税額(所得税及び復興特別所得税)の算出

申告税額=
(課税所得額×合計税率-控除額)-税額控除*2

*2税額控除とは、計算された税額から一定額を差し引くことができるしくみで、配当控除、住宅借入金等特別控除等があります。

*3申告税額に、別途復興特別所得税2.1%を乗じた金額が、実際の申告税額となります。

税率・控除額表(平成29年分~平成30年分)
課税所得額 税率 控除額
195万円以下 5%
195万円超330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円